今日のごはん日記

料理の記録や気ままな日記を書いてます😄

森友の話し

いよいよ、森友裁判が始まった。亡くなった赤木俊夫さんの妻・雅子さんが国と佐川元理財局長を訴えたのだ。今週の文春に雅子さんの切実な法廷発言全文が載っている。

財務省が出してきた調査報告書には、誰がどんな指示で改竄を命じたのか、記載はない。赤木さんの自殺についてもふれていない。

いちばん知りたいことは、俊夫さんが命を絶った本当の理由とそこに至る経緯。と雅子さんは語る。裁判を起こす側は、いつもそうだ。医療ミスで亡くなった方の遺族が訴訟を起こしたニュースをたまに目にするが、決まって「私達は真実が知りたいだけ。お金じゃないんです。そしてミスがあったのなら、一言謝罪してほしい。それだけです」と言う。人としての誠意の問題・・最後はそこに行きつく。俊夫さんの手記には「すべて佐川理財局長の指示です」とあるのだから、是非本当のことを話してほしい。

ドイツの哲学者ハンナ・アーレントによると、ナチス政権下、ユダヤホロコーストに関わっていたアドルフ・アイヒマンは、裁判で「私は上から指示されたことをしただけです」と言ったそうだ。普段は善き市民、善き家庭人だったのだろう。しかし、組織に埋没して思考停止状態になり、結果巨悪の歯車になってしまう、そして権力者から見ればこの上なく忠実で使い勝手のいい存在;このような『凡庸なる悪』が歴史を悲劇にしていくのだ。分かりやすい悪者ばかりが地獄を作っているのではない、というのは改めて考えさせられる・・確かに守るべき家族がいたら、出る釘にならない方が安全に決まっている。しかしそのために良心を棄てていいものか・・難しい。

ところで、今夜から『半沢直樹』の続編が始まる。前作の総集編は、細かいストーリーをすっかり忘れていたので楽しめた。「水戸黄門」の流れを汲む(ような?)古典的勧善懲悪。長いものに巻かれない半沢直樹はカッコいい。でも、俊夫さんのそばに彼みたいな人がいてくれたら少なくとも死ななくて済んだかもしれない・・そう思うと、改竄に関わった人達がみんな異動してしまい、自分だけがぽつんと残されたときの恐怖・孤独感はどれほどだっただろう、と胸が締め付けられる。ただ、原作者の池井戸潤さんは言う。「半沢直樹のマネは絶対にしないで下さい!」確かにそうだ・・あれは現代版の「痛快娯楽時代劇」だから、リアリティーはない。現実はむしろいい人が抹殺され悪人はのさばるという、松本清張の作品みたいなものだ。悲しいけど・・

だが、俊夫さんの手記を公開し、彼の名誉のためにいま雅子さんが頑張っている。そして彼女をサポートしているのが相澤冬樹さんだ。相澤さんは元NHKの記者だったが、森友問題に関するスクープを出したことにより、官邸と通じる上司の怒りを買い、最後はNHKを追われた人だ。最近のNHKを見ていると「解説」に出てくる政治部の記者は官邸ベッタリで、政権に対する忖度が露骨に見て取れる。そんなNHKという組織と闘ってきた相澤さんは、結局は辞めることになったけれど、いまだ森友問題を追っている。ここにも半沢直樹のような人がいたんだな・・?雅子さんが、俊夫さんの手記を相澤さんに託したのも、彼ならわかってくれると信頼したからだろう。保身から行動しているといつか身を滅ぼすこともあるだろうけれど、彼のように職場を去ることになっても怯むことのない執念が、この裁判を起こす力になったのだと思う。心から応援したい。

しかし日本では、司法の独立は守られていない。色々な判決を見ているとそう思う。原発問題もそうだけれど、国策に反した判決を下すと左遷されたりするから、良心に従った判決を出せないのだ。だから、森友問題もどうだろう・・と私は懸念している。裁判官の黒い法服には「他の色に染まらない=何者にも与しない、公正な判決を下すため」という意味がある。この色を身につける資格のある人に、判決を下してもらいたいと思う。判決を下す側の人間もアイヒマンになってはならないと思うのだ。