今日のごはん日記

料理の記録や気ままな日記を書いてます😄

張込み

この作品、初めて見たのですが、傑作でした(^_^)1958年という、今から60年も前の作品です。私はまだあの世にいた・・

逃亡中の強盗犯が、昔の恋人に会いに来ると踏んで、刑事の柚木は佐賀まででかけ、元恋人・さだ子の家を張り込みます。真面目な銀行員と結婚して、家事を淡々とこなす彼女にそんな気配は全くないけれど…ついに7日目…(!)( ゜o゜)!

映画では、横浜駅から鹿児島行きの夜行列車が出ていて驚きました。しかも車中2泊で、硬い椅子しかない車両。混んでいて刑事は座れない…。真夏のうだるような車内には小さな扇風機のみ・・この描写が冒頭10分くらい続きます。ストーリーと関係なさそうな場面も丁寧に撮って、作品に厚みを持たせています。旅行が今よりずっと大変だったことや、当時の時代風俗などが見られて、良い場面でした。映画ってこういうムダに思えるシーンが、雰囲気づくりには大切なんだろう…作品を紹介した本によると、実際に撮影用の車両を増結して、長旅をしながら制作したらしい( ゜o゜)。監督、スタッフの熱意がすごい!

さだ子の秘められた心の内がテーマ。

彼女はかつての恋人に会って、別れたことを後悔していると告白しますが、ここで初めて、能面をはずして本当に生きているさだ子を見ました。表情豊かな彼女は本当に魅力的でした。

平凡でつまらない女性にしか見えなかったけど、本当は燃える情熱を持っていた…。昔は、女性が自由に生きることは難しかったから、いろんなことを我慢していたんだろう…「二面性」というより、生きるためにもう1人の自分を作らなければならなかったのかも…。

柚木自身、恋人はいるものの、結婚を渋って振られそうになっているところなのです。だからふたりのやり取りを、我がことのように感じて…。ヒロインだけでなく刑事の想いも同時に描いたストーリーは上手いなぁ…と思いました。最後、事件が解決して佐賀を出発する直前、柚木がプロポーズの電報を打つところは、この映画の救いのように感じられます。さだ子と彼氏の方はどうなるのかな?と疑問が残る終わり方でしたが。

小説では、柚木の結婚話や葛藤は描いてなく、この部分は映画スタッフの創作ですが、原作者の意図を酌んだ創作だからでしょう。これは清張お気に入りの作品らしい✨

ゼロの焦点」もそうでしたが、心の中にある重い石をひたすら隠して生きてきた女性たちへの眼差しが、清張作品からは感じられます。社会の底辺や陽の当たらない所で、たくさんのままならない人生があったのでしょう。そんな名もなき人の苦しみも見逃さないから、清張作品は人気なのだろう・・

私の母も絵に描いたように平凡な女性ですが、本当は熱い心を持っていたのかもしれないなぁ、若い頃は…。聞いたことはないけれど、燃える恋もあったのかも……?映画を見たあと、そんなことをぼんやりと考えました。

「点と線」は福岡、「砂の器」は島根と、いろんな場所へ旅行しているような気分になります。寅さんにも負けてない全国展開(^_^)。「作品の舞台を巡るツアー」があったら行ってみたい……(^_^)